2025年8月27日に埼玉県坂戸市で、養鶏場の大屋根が吹き飛ばされる突風被害(ダウンバーストまたはガストフロント)が発生しました。
この突発的な自然災害による大きな被害が、坂戸市周辺地域の皆様の「屋根の強度」への意識を高めるきっかけとなりました。
今回はこうした背景を踏まえて、屋根のカバー工法がどのように進むのか、写真付きで詳しく解説をしていきます。
施工前の現地調査について
高所カメラで屋根の状態を確認します
丸山建設株式会社では、高所カメラを使用して、屋根の割れ、スレートの欠け、棟板金の浮きなど屋根全体に問題や異常が無いか細かく点検をしていきます。

雨漏りの可能性が無いかをチェックします
一見すると綺麗に見える屋根ですが、プロの目で見ると大きな問題がある事に気が付きます。
写真の赤い丸で囲った部分の屋根材をよく見てみると、少し膨れ上がっているのが分かるかと思います。
これは屋根の「谷」と呼ばれる部分で、雨水を一か所にまとめて流す重要な役割を果たしていますが、その「谷」の部分が雨水を含んで膨らんでしまっているのです。

雨漏りしてからでは遅い理由
多くのお客様は「雨漏りしてから修理すればいい」と言いますが、雨漏りしてからではお家の中まで修理が必要になるため費用は2倍です。
なので、屋根は雨漏りする前に予防修繕工事をしておくことで、余計な修理費を防ぐことが出来るため結果的にお得となります。
屋根カバー工法の全体の流れ
①安全のための仮設足場の設置から始めます
屋根工事は高所作業が多いため、まずは職人さんが安全に動けるよう仮設足場をしっかり組むところから作業を進めていきます。
安定した仮設足場を組むことで、職人さんの作業のしやすさから施工の精度も品質も大きく向上すると共に、現場周辺をご通行の皆様の安全も合わせて確保できるため、重要な役割を果たしています。

②雪止め金具をマキタのサンダーで撤去
仮設足場のメッシュシートを設置した後は、早速屋根の工事に取り掛かります。
カバー工法では屋根に防水紙を施工する前に、屋根の上に雪が積もった時にお家の玄関などに雪が落下しないようにするための雪止め金具をマキタのサンダーで撤去するところから始めます。

③昇降リフトで防水紙の荷上げ
雪止め金具を撤去し終わったら、昇降リフトを使って防水紙の荷上げを始めます。
現場の状況によって、昇降リフトのスペースが確保できない場合は職人さんの手上げ作業で資材を荷上げすることもありますが、この写真の防水紙(ルーフィング)1個23kgもあるんです。

④防水紙をマキタの釘打ち機で貼っていきます
屋根に貼る防水紙(ルーフィング)は、お家全体を雨漏りから守る重要な役割を果たしています。
雨水は屋根の上から下に流れていくのに対して、防水紙は下から順番に貼っていき、下の防水紙に上の防水紙を100mm重ねて、隙間から雨水が侵入しないように施工します。

防水紙をマキタの釘打ち機で貼るときに、釘をそのまま直に打ち込んでしまうと釘が防水紙を貫いてしっかりと固定出来ないため、防水紙と釘の間に「板金の切れ端」を挟んで固定します。

防水紙(ルーフィング)の完了後の全景写真です。
防水紙は屋根の1次防水と言われており、屋根材本体を施工する前にしっかりと防水処理をしておくことで、例え自然災害などで屋根に異常が起きたとしてもすぐに雨漏りしないための、とても大切な役割を持っています。

⑤昇降リフトで屋根材の荷上げ
防水紙を屋根全体に貼り終わった後は、屋根材本体(スーパーガルテクト)を貼った防水紙の上にすべり落ちないように配置していきます。
一般的な一軒家であっても、かなりの数量となるため防水紙の荷上げに使用した昇降リフトを使って、2名の職人さんで屋根材の荷上げをしていきます。

屋根の上は勾配と言って、雨水が流れ落ちるように傾斜になっています。
そのため、そのまま屋根の上に材料を置くと滑り落ちてしまうため、写真のような「当て木(あてぎ)」という土台で固定をしておく必要があります。

⑥役物板金(水切り・谷・ケラバ)の加工と取付
軒先水切り板金
屋根のカバー工法を施工する際に取り付ける役物板金は、軒先の水切り板金だけに限らず、全ての板金材を長年の経験を積んだ職人さんが専用の板金鋏(ばんきんはさみ)で加工します。
丸山建設株式会社の職人さんが使用している板金鋏は、昔から受け継がれていて今はもう手に入らない廃盤となった板金鋏です。

軒先に取り付ける水切り板金は、既存の屋根材と新しく貼り付けた防水紙との間に差し込んで、ビスで固定します。
防水紙の上を雨水が流れたと想定した時に、屋根の先端部分から既存の屋根に雨水が染み込んで雨漏りしないための重要な役割を持っています。

本谷板金
本谷板金は屋根の役物板金の中でも一番重要な板金になります。
冒頭でご説明をした「谷」と呼ばれる部分で、雨水を一か所にまとめて雨樋まで流す重要な役割を果たしているため、本谷板金を固定するビスを1本でも打つ場所を間違えると雨漏りに直結するため、細心の注意を払って加工・取付をする必要があります。

本谷板金は、初めに施工した防水紙(ルーフィング)と役物板金で1番目に取り付けた軒先水切り板金の上から取付をします。
切り落とした部分の一部を軒先水切り板金の上から下に折り下げることで、流れ落ちた雨水が既存の屋根材に染み込まないように防ぐことが可能です。

ケラバ板金
ケラバ板金は「本谷板金」と同じ特徴があり、屋根の上に降った雨水を雨樋まで誘導し、屋根材の下に雨水が入り込むのを防ぐ役割を持っています。

ケラバ板金も初めに施工した防水紙(ルーフィング)と役物板金で1番目に取り付けた軒先水切り板金の上から取付をします。
折り曲げた部分は、屋根材(ガルテクト)が上に被さることで、雨水が板金の上から入り込む状況を防ぐ加工を施しています。

⑦屋根材(ガルテクト)の加工・取付
今回カバー工法に使用する屋根材は、アイジー工業株式会社の「スーパーガルテクト」という、超高耐久ガルバリウム鋼板を屋根材の表面に使用しており、断熱材と遮熱性塗装を組み合わせた金属で造られた屋根材です。
主な特徴は、錆びづらく熱を反射する効果があり、耐久性・軽量性・断熱性とどの角度から見ても屋根材の中でもトップクラスの性能を持っています。

屋根材(ガルテクト)を取り付ける前に、足場の上に加工台を用意して、役物板金(水切り・谷・ケラバ)が重なる部分をマキタの丸ノコという電動工具で切断する必要があります。

特に「本谷」の斜めになる勾配部分の加工は熟練の職人技術でも難しく、ほんの少し勾配がずれるだけで、屋根材が無駄になってしまうので慎重に勾配を合わせる必要があります。

足場の上に用意した加工台の上で、先ほど合わせた勾配定規を使って屋根材(ガルテクト)を斜めにマキタの丸ノコで切断していきます。

マキタの丸ノコで切断した屋根材(ガルテクト)を、先ほど慎重に勾配を合わせた「本谷」の場所に合わせて取り付けます。
お見事、綺麗に「本谷」の斜めの勾配に対して屋根材(ガルテクト)の斜めの勾配がしっかりと合っているのが分かります。

⑧雪止め金具をマキタのインパクトで取付
冒頭でもご説明をしましたが、雪止め金具は屋根に積もった雪が一度に滑り落ちるのを防ぐための部材のことで、落雪による人身事故、家屋やカーポートの破損、隣家とのトラブルを防ぐ役割を持っています。

②番の工程で古い雪止め金具を撤去したので、新しい屋根材(ガルテクト)を施工しながら新たに雪止め金具をマキタのインパクトで取り付けていきます。

雪止め金具は、下の段の屋根材と上の段の屋根材の間に挟む形で取り付けます。
その際、雪止め金具を固定するインパクトドライバーで下の段の屋根材を傷つけないように細心の注意を払って施工する必要があります。

雪止め金具を屋根の全体で取り付ける位置は決まっていて、屋根材(ガルテクト)の下から2列目と3列目の2段に分けて、千鳥配置で取り付けて、屋根全体にかかる積雪の負荷を分散させる目的があります。

⑨役物板金(棟)の加工と取付
丸山建設株式会社の職人さんは、傾斜のある屋根の上で大きな板金材を落とさないように細心の注意を払いながらでも、しっかりと精度の高い板金加工を施します。

屋根材(ガルテクト)と雪止め金具を屋根の全体に取り付けたら、棟板金の下地となる木材を屋根材の上に乗せるように取り付けていきます。

棟板金は屋根の一番上の部分に取りつける役物板金で、屋根材(ガルテクト)を下から順番に取り付けてきた一番最後の屋根材の上にかぶせる蓋だと思ってもらえるとイメージしやすいかと思います。

棟板金の一番最後に取り付ける寄棟(よせむね)は、3つの方向から交わる頂点の部分をしっかりと合わせないと、板金と板金の間に隙間が出来て雨漏りの原因になりかねないため、熟練の職人さんでもかなり難しい加工と言われています。

⑩役物板金(棟)のコーキング処理
最後に、棟板金のコーキング処理を施したら屋根のカバー工法は全ての工程が完了となります。
棟板金のコーキング処理は、余分なコーキング材がはみ出ないようにマスキングテープを綺麗に貼って、コーキングを補填した後に「ゴムヘラ」で綺麗に仕上がりを整えていきます。

大事なところなのでもう少し詳しく見ていきます。
「ゴムヘラ」で整えたあとのコーキング材が、マスキングテープと棟板金の間にしっかりと密着しているのが分かるかと思いますが、隙間なくコーキング材を綺麗に整える作業が雨漏りを防ぐ重要な工程となります。

最後にマスキングテープを剥がして、棟板金のコーキング処理は完了です。
お家の雨漏りの原因は屋根の上からが90%を占めているため「屋根の上は見栄えよりも機能性」という言葉があるほどですが、丸山建設株式会社では「見えない場所だからこそ丁寧に」を基本として全ての工事に拘りを持って施工させていただいております。

屋根カバー工法の工事期間について
屋根カバー工法は、一般的にはおよそ1週間ほどで完了すると案内している会社が多いですが、丸山建設株式会社では、スピードよりも仕上がりの品質を最優先にしています。
そのため、ひとつひとつの工程を丁寧に進める方針を取っておりますので、足場の設置から解体まで含めると、全体の工期は約2〜3週間ほどいただいております。
坂戸市の現場では23日間かけて丁寧に施工しました
今回の坂戸市の現場では、実際に23日間かけて、各工程を確認しながら慎重に施工を進めました。
屋根の形状や板金加工の量、天候の判断など、必要な工程をしっかり積み重ねることで、長期的に安心できる仕上がりを実現しています。
屋根カバー工法にかかった参考価格について
今回ご紹介する価格は、坂戸市で実際に施工した屋根カバー工法をもとにした 「あくまで目安となる参考価格」 です。
参考価格の見方
お家の形状や屋根の勾配、劣化の進み具合、必要な補修の有無などによって費用は上下しますが、
「このくらいの規模だと、だいたいどれぐらいになるのか?」 をイメージしていただくためのものになります。

【料金の目安はこちら】▶︎ 屋根カバー工法の料金表を見る
工事のビフォーアフターを写真で見てみる
今回の工事は、2025年8月27日に坂戸市で発生した突風被害で養鶏場の屋根が飛ばされたニュースをきっかけに、お客様ご自身が「屋根の強度」への意識を強く持たれたことでいただいたご縁です。
工事前:Before
こちらは、カバー工法の施工前に高所カメラで撮影した屋根全体のお写真です。
ぱっと見はきれいに見えるのですが、実際には「谷」の部分が雨水を含んで膨らんでいる状態でしたが、幸いにもまだ雨漏りには至っておらず、お客様の早めの決断が功を奏しました。

工事後:After
屋根カバー工法によって、古い屋根の上に防水紙(ルーフィング)と新しい屋根材(ガルテクト)を重ね張りし、強度・断熱・防水性能が大幅に向上しました。
見た目も美しく整い、台風や突風にも耐えられる安心安全な屋根へと生まれ変わりました。

おまけ:お客様からの差し入れ
工事期間中にお客様から差し入れをいただき、職人一同大変ありがたく頂戴し、現場の雰囲気もより明るくなりました。
この度は、丸山建設株式会社へ工事のご依頼をいただき、誠にありがとうございました。

